秋の花粉(ブタクサ・ヨモギ)にやさしく備える

養生

――中医学で「肺」と「潤い」を整える、生活養生と漢方――

はじめに

朝晩の涼しさとともに、くしゃみ・鼻水・鼻づまり・のどのイガイガ・肌のカサつきが増える——「秋の花粉かな?」と思ったら、

まずは生活養生で土台を整え、必要に応じて漢方でやさしくサポートしていきましょう。
中医学では秋は燥(乾燥)が強まり、鼻・のど・皮膚を司る肺がゆらぎやすい季節。

今日から実践できる養生と、対症(つらい時)/体質改善(根本)の漢方の使い分けを、薬剤師の視点でまとめました。


中医学の基本

  1. 肺は皮毛を主る:鼻・のど・皮膚の粘膜は“肺”のテリトリー。乾燥でバリア(衛気)が弱ると刺激を受けやすくなります。
  2. 風燥:風に乗る花粉+乾燥の組み合わせ。粘膜がカサつき、ムズムズや咳が出やすい。
  3. 脾のケア:食から(エネルギー)と津液(うるおい)を作る台所。冷たい・甘いの摂りすぎは長引く不調のもと。

※用語ミニ解説:衛気=体表のバリア力/=エネルギーの流れ/津液=体のうるおい


セルフチェック

  • 朝の連発くしゃみ・透明鼻水
  • 鼻・のどの乾き、声枯れ
  • 目や皮膚のかゆみ、乾燥肌
  • 冷たい飲食・甘いお菓子で悪化
  • ストレスで症状が揺れやすい
  • 冷房の直風でのどがイガイガ

当てはまるほど、「肺のうるおい」「バリア力」のケアが役立ちます。


生活養生(項目を分けて記載)

1)環境・習慣

  • 湿度50〜60%を目安に加湿。エアコンの直風は避ける。
  • 外出時はマスク+メガネで物理バリア。帰宅後は生理食塩水で鼻洗浄。通常の水でもOK。
  • 水分摂取はちびち。一気飲みは体を冷やしやすい。
  • 入浴は38〜40℃で10〜15分。のぼせやすい人は短めに。

2)呼吸・睡眠

  • 朝3分の鼻呼吸散歩(背すじを伸ばしてゆっくり吸う・吐く)。
  • 就寝1〜2時間前はスマホ控え、副交感神経を優位に。
  • 口呼吸傾向の方は唇を閉じ舌を上顎へ(舌位の意識)。

3)食養生(潤い+健脾)

  • 潤い:梨・大根・豆腐・白ごま・れんこん・はちみつ(加熱しすぎず)。
  • 健脾:山いも・かぼちゃ・米(おかゆ)・鶏ささみ・きのこ。
  • 控えめ:冷たい飲食、甘いドリンク、アルコール過多、辛味のとりすぎ。

4)体質別の習慣のポイント

  • 乾燥タイプ:加湿+潤い食材を少量ずつこまめに。長風呂は控え、保湿を丁寧に。
  • バリア不足タイプ(気虚):睡眠最優先、朝日を浴びる、温かい食事。
  • ストレスタイプ(肝鬱):深呼吸1分×3回/肩甲骨を動かす/カフェインは午後控えめ。
  • 水たまりタイプ(痰湿):腹八分・揚げ物減らす・入浴で発汗スイッチ。

漢方の紹介

ご注意:以下は一般的な使用例です。体質・症状・持病・併用薬により適否が分かれます。自己判断での長期服用は避け、医師・薬剤師・専門家にご相談ください。妊娠・授乳中や、麻黄・附子・甘草など特定生薬を含む処方は特に慎重に。

A. 対症(つらい時の短期サポート)

  • 小青竜湯(しょうせいりゅうとう)
    めやす:水様鼻水・くしゃみ・悪寒。冷えが背景の鼻症状に。
    相性の養生:体を冷やさない/首元を温める。
    留意:乾燥が強いタイプには不向きなことあり。循環器・甲状腺疾患などは要相談。
  • 辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)
    めやす:鼻づまり・におい低下・こもった熱感(黄っぽい鼻症状を伴う場合)。
    相性の養生:加湿・鼻洗浄・十分な睡眠。
    留意:冷えが強い場合は別処方を検討。
  • 葛根湯加川芎辛夷(かっこんとう か せんきゅう しんい)
    めやす:肩こり頭痛を伴う急性鼻炎・鼻づまり。
    相性の養生:首肩ストレッチ・入浴で巡りアップ。
    留意:発汗が過度な時、体力低下時は不適のことあり。
  • 越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)
    めやす:むくみ体質+鼻粘膜の腫れで鼻閉が強いケース。
    相性の養生:塩分と甘味を控え、利湿(はとむぎ・とうもろこし)を意識。
    留意:のどの渇き・便秘が強い等、熱の偏りには注意。
  • 麦門冬湯(ばくもんどうとう)
    めやす:のどの乾燥・空咳・刺激性の咳。乾燥タイプの不快感に。
    相性の養生:加湿・ぬるめ入浴・就寝前ののど保湿。
    留意:痰が多い・水っぽい鼻水優位なら他処方を検討。

B. 体質改善(中長期のベースづくり)

  • 玉屏風散(ぎょくへいふうさん)
    狙い:衛気(バリア)を支える。季節の変わり目の守りに。バリア不足タイプへ。
    併せ技:朝日×鼻呼吸×温かい食事。
  • 補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
    狙い:疲れやすさ・だるさの背景にある気虚を立て直す。
    併せ技:睡眠の質改善・腹式呼吸・よく噛む。
  • 参苓白朮散(じんりょうびゃくじゅつさん)
    狙い:胃腸の弱さ・むくみ・頭重の痰湿体質に。
    併せ技:甘い飲料・揚げ物を減らし、利湿食材を日常化。
  • 逍遙散(しょうようさん)
    狙い:感情の揺れやPMSがからむストレスタイプの巡りケア。
    併せ技:深呼吸1分×3回/肩甲骨ほぐし/就寝前のデジタルデトックス。
  • 乾燥が強い方の滋陰サポート
    麦門冬湯などの滋陰系が検討されることも。食では梨・白ごま・豆腐・大根などをコツコツ。

選び方のコツ
① まずは今のタイプ(乾燥/気虚/ストレス/痰湿)に合わせる
1〜2週間で“過ごしやすさ”の変化を観察
③ 併用薬(降圧薬・利尿薬・ステロイド等)や既往症は専門家に要確認


西洋医学と併用

  • 一般に、非鎮静性抗ヒスタミン薬点鼻ステロイド生理食塩水による鼻洗浄アレルゲン免疫療法が選択肢。
  • 受診の目安:発熱・強い倦怠感・息苦しさ・嗅覚味覚の変化、強い充血や痛み、皮膚症状の急拡大など。
  • 妊娠・授乳中、持病や内服中の方は自己判断での追加薬・サプリは控え、医療者に相談を。

まとめ

  • 秋は「肺」と「潤い」がテーマ。
  • 生活養生で土台を整え、つらい時は対症、落ち着いたら体質改善へ。
  • 完璧を目指さなくて大丈夫。できることを1つ続けるだけで、秋はもっと楽になります。

今日の一歩:朝の鼻呼吸散歩3分+帰宅後の鼻洗浄。
早めに対策して、できることから始めていきましょう!!

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